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小説家になりたい人のために、書き方を学ぶ物語論や文学理論のおすすめ本を紹介

2017年11月17日学習, 実用, 趣味

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実は私、学生時代、小説家を目指していました。

小説新人賞に応募したこともあるのです。(最終選考で落ちましたが。)

社会人になってからも、小説執筆は趣味で続けています。

小説を書くって素晴らしいことですよね!

仕事でつらい経験をしたって自分の文章の糧にすることができますからね。夢や希望を忘れないために、私は今も小説を書いています

文章力の向上にも繋がるし、いい趣味だと思っています。

そんなわけで、今回は、小説家になりたい人向けの本のおすすめを紹介していきます

プロ作家志望でなくとも、より小説を深く楽しむ目的で読んでみてもいいかもしれません。

前半は「プロ作家たちによる小説の書き方講座」、後半は「超本格的な物語論の理論書」と分けて書いていきます。

小説技術を向上させたい人は、ぜひ参考にしていってください!

 

★プロ作家たちによる小説の書き方講座★

『書きあぐねている人のための小説入門』保坂和志

小説を書くときにもっとも大切なこととは?実践的なテーマを満載しながら、既成の創作教室では教えてくれない、新しい小説を書くために必要なことをていねいに追う。読めば書きたくなる、実作者が教える“小説の書き方”の本。著者の小説が生まれるまでを紹介する、貴重な「創作ノート」を付した決定版。

芥川賞や谷崎潤一郎賞などをとり、数多くの小説を出版している作家「保坂和志」による、小説ノウハウ本です。

作家とは往々にして厄介な人種であり、「小説の入門書(笑)」みたいなスタンスの人がむしろ大多数なのですが、本書は基本的なところからしっかり解説してくれます

「テーマ」「ストーリー」「描写」などの、三流講師が解説するようなマニュアル的な項目にもしっかり触れてくれていて、作者の温かい人柄を思わせます。

「なんとなく小説執筆してみたい」に応えて丁寧に教えてくれるような内容で、まさに「書きあぐねている」人向けの最高に優しい入門書です。

一流の作家がこのような本を執筆してくれたことに感謝すべきでしょう。

『小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない』大沢在昌

200以上ある文学新人賞から毎日多くの作家が誕生しているが、数年後に残るのはわずか数パーセントにすぎない。30年以上にわたりトップを走り続ける著者が、作家になるために必要な技術と生き方のすべてを惜しげもなく公開する小説講座の決定版。

ハードボイルド小説・冒険小説の優れた書き手であり、膨大な作品を世に出してベストセラーを乱発している大沢在昌氏の、志の高い小説執筆本です。

純文学系ではなく、エンタメ娯楽小説系のハウツーですね。

長きに渡る作家生活の精髄を惜しげもなく公開してくれていて、たしかにこの本に書いてある通りのことができれば、小説家デビューできるかもしれないな、と思わせられる内容でした。

ただ、やはり真似することのできない作家の本質的なスゴさを感じます。打ちのめされるような小説入門書です。

実はあの大沢在昌さんですら、若くしてデビューした後は、10年くらい小説が全然売れなかった時期が続いたそうです。

「デビューだけで満足してはいけない」という副題に、著者の強い思いが込められています。小説家って、デビューすることよりも小説家である続けることのほうがずっと難しいんですよね。

小説家を目指している人が読んで「つまらない」という感想を抱くことはあり得ないと思います。

『ミステリーの書き方』日本推理作家協会

どうしたら小説が書けるの? アイデアはどこから生まれてくるの? プロの作家に必要なことは?――ミステリーの最前線で活躍する作家が、独自の執筆ノウハウや舞台裏を余すところなく開陳した豪華な一冊。日本推理作家協会に所属する現役作家たちが答えた貴重なアンケートも収録。作家志望者のみならず、すべてのミステリーファン必読の書。

個人的に、小説ハウツー本で一番おすすめなのは断トツでこれですね。

ここまで豪華なノウハウ本は他に無いでしょう。

東野圭吾「オリジナリティがあるアイデアの探し方」、宮部みゆき「プロットの作り方」、北方謙三「文体について」、石田衣良「会話に大切なこと」、伊坂幸太郎「書き出しで読者を摑め!」花村萬月「推敲のしかた」、恩田陸「タイトルの付け方」などなど。

「日本推理作家協会」に所属している、あまりにも豪華なラインナップの作家たちが、それぞれの小説技法を解説していきます

作家によって切り口は様々ですが、第一線級の作家たちばかりなので、どの章も正座をしながら読みたいような有り難い内容です。

小説の書き方に正解はなく、最終的には自分なりの書き方でやっていくしかないのですが、プロの創作論はノウハウの宝庫ですし、読んでいるとモチベーションも高まってきます。

ミステリーには読者の心を惹きつける技法が詰まっていて、ミステリー以外の小説を書くつもりの人にとっても、絶対に読んで損することのない項目ばかりです

色んなプロの作家が大絶賛している内容で、初心者にとっても上級者にとっても有用な本であることに間違いはありません

『ストーリーメーカー 創作のための物語論』大塚英志

それは創作への冒瀆なのか、パンドラの箱なのか。

読むな、使え。30のQ&Aに答え、物語る。
あなたは物語る装置である。しかし、あなたはそれを鍛えることもなく、発動させることもない。30のQ&Aに徹底して答え、そして、思考することであなたの内なる「物語発生装置」を鍛え直し、再起動する、「読む」のではなく、書き込んで「使う」ための物語制作マニュアル。

日本を代表するキモオタ系知識人の大塚英志ですが、実力は本物です。

純粋に読んでいて面白く、「創作への冒涜」「パンドラの箱を開ける」と豪語するだけのことはあります

物語論や批評理論の知識が無い人が読めば、目から鱗が落ちるような視点の連続でしょう。

しかも本書は、実践的に使うことを想定した物語制作マニュアルです。

本書に書かれている方法を実践すれば、本当に、ビックリするくらい簡単に、物語が作れてしまうのです。

逆に言えば、話の筋などと言ったものは、小説のほんの一部の要素でしかないということです

描写や人物造形や設定など、小説を書く上で苦労する必要のあるものは他にもたくさんあります。

これを読んだだけで良い小説が書けるわけではないですが、ストーリーラインについて無駄に悩む手間は省けるでしょう。

『一億三千万人のための小説教室』高橋源一郎

小説は教わって書けるようになるのか? 小説はどう発展してきたのか? 小説にとって重要なのは,ストーリーか,キャラクターか,それとも,描写なのか? こうした疑問に答える,刺激的で実践的な教室.さまざまな文体を比較して,練習問題も豊富.「先生」と「生徒」の対話を追ううちに,小説とは何か,が見えてくるだろう.

作家である高橋源一郎は、文章を書くことの歓びを伝えたり、文章を誰かに教える活動に熱心です。

しかし、冒頭から、「わたしの知っている限り、『小説教室』や「小説の書き方」を読んで小説家になった人はひとりもいません」と言ってのけます。

なぜなら、「小説家は、小説の書き方を、ひとりで見つけるしかない」からです。

そして、小説の書き方をひとりで見つけるためにやるための準備の方法が、本書に書かれています。

商業作家は、ほんの一握りであり、確かに「ひとりで見つける」くらいのレベルでないと、他よりも秀でることはできないのでしょう。そこを誤魔化さずにハッキリと延べ、なおかつ「どうすればいいのか?」という道筋をある程度示しています。

こういう本こそが、一番まともな「小説家になるためのノウハウ本」なのでしょう

まずは、小説を楽しく読むことから。

タイトルの通り、プロを目指しているわけではないけど小説を書いてみたいと思っている人にもおすすめです。

『文学部唯野教授』筒井康隆

これは究極のパロディか,抱腹絶倒のメタフィクションか! 大学に内緒で小説を発表している唯野先生は,グロテスクな日常を乗り切りながら,講義では印象批評からポスト構造主義まで壮観な文学理論を展開して行くのであったが….「大学」と「文学」という2つの制度=権力と渡り合った,爆笑と驚愕のスーパー話題騒然小説.

解説書でもノウハウ本でもなく、「文学」と「批評理論」がわかる実験的な小説です。

主人公は、早治大学(早稲田大学)の名物教授でありながら、密かに小説を発表している作家でもあります。

本書では、作中で文学講義が行われるのです

しかも、「ロシア・フォルマリズム」「記号論」「ポスト構造主義」など、内容はけっこう本格的なのです。文学だけでなく哲学や現代思想の分野までやっています。

語り口が軽快な上に、物語の面白さもあるので、グイグイ読み進めてしまいます。

何度読み返したかのかわかりません。私がもっと教養を身に着けたいと思い、哲学科に入学したのも思えばこの小説がキッカケだったのかも。

純粋に小説として傑作であり、教養や文学を学ぶこともできる、一挙両得な本です

ちなみに、筒井康隆の小説解説本は、『創作の極意と掟』『短編小説講義』もおすすめです。

筒井康隆のファンになった人は上の二つも読んでみてください。

『昔話の形態学』ウラジミール・プロップ

文を超えたテクストのレベルにおける《文法》の探究の最初の試みとして、民話・神話・物語等の記号論的研究において、今や、構造言語学におけるソシュール『講義』にも比すべき位置をもつ記号学の第1の古典。

様々な物語本に引用されているので、すでに内容を知っている人も多いかもしれません。実際に原著を読むに越したことはないのですけどね。

本書は、ロシアの民話学者プロップが、1928年に出版した物語論の古典です。

プロップは、ロシアの民話の「魔法物語」というジャンルを調べ、そこにある共通の構造を分析しました。

「構造分析」や「構造主義」の先駆けとなった本でもあります。

物語には、様々な人物が登場し、様々なことが起こります。そのパターンや種類はほぼ無限であり、とうてい数えられるようなものではありません。

しかし、それぞれの人物の行動や立ち位置が、物語でどのような役割(機能)を果たしているかに着目して分析してみると、わずかな項で、それらを分類できることが発見されたのです

7つの行動領域

1敵対者、2贈与者、3助力者、4王女とその父親、5派遣者、6主人公、7偽主人公

と、31の機能分類

1不在、2禁止、3侵犯、4探りだし、5漏洩、6悪計、7幇助、8敵対行為、9仲介・連結の契機、10始まった反作用、11出発、12寄与者の第一の機能、13主人公の反応、14調達、15二つの王国間の広がりのある転置・道案内、16戦い、17照準、18敵の勝利、19不幸または欠落の除去、20帰還、21迫害・追跡、22救い、23気付かれない到着、24根拠のないみせかけ、25難題、26解決、27判別、28暴露、29姿の変更、30罰、31結婚もしくは即位

によって、ほぼすべての物語を説明できるのです。また、逆に言えば、これらを組み合わせれば物語が完成するということでもあります。

小説のストーリーを考える上で、この知見が役に立つことは言うまでもありません。

プロップが分析したのはロシア民話の魔法物語なので、同じことがラブコメディやギャグや文学に適用できるとは限りません。しかし、現在のハリウッド大作映画やロールプレイングゲームなどの作品は、ほとんど上の分析が当てはまります。

場面や文章は思い浮かぶけれど、物語の道筋を作るのが苦手という人は、本書を手にとってみるべきです。

『批評の解剖』ノースロップ・フライ

過去二千年の西洋文学を対象化してその特性を構造的に明らかにし、文学の研究すなわち批評のあり方に根源的変革を迫った古典的名著。文芸評論つまり批評家による個々の作品の直接体験と作品の価値評価とは別個に、文学の全体をより大きな脈絡の中で捉えその構造を透視する真の「詩学」の存在を主張する。第16回日本翻訳出版文化賞受賞。

文学研究ノースロップ・フライによる、「ジャンル」に着目した文学理論の研究です。

非常に長いスパンで、文学の変遷を辿り、文学の変化を解き明かします。

フライの研究の面白いところを一言で言うと、「文学の主人公は、時代を経るにつれて弱くなっていった」のです。

フライによると、小説のジャンルは主人公の強さ(能力)によって決まります。

ざっくり言うと、主人公の能力が他の大多数よりも卓越しているのが「神話」、主人公が他よりも優位にあるのが「ロマンス」、主人公は他よりも秀でているが制約や拘束を覆せるほどではないものが「悲劇」、主人公と他の人物が同程度のものが「喜劇(コメディ)」、主人公が他よりも劣っているものが「皮肉(アイロニー)です。

面白くないですか?

もちろん、こんなざっくりとした感じではなく、本書ではもっと厳密に、具体例を挙げながら説明されています。

文章が難解なので読むのには骨が折れますが、世界で最も有名な批評理論と言っても過言ではない著作なので、チャレンジしてみると糧になると思います

『物語のディスクール』ジェラール・ジュネット

「物語論(ナラトロジー)」という分野を大成させたジェラール・ジュネットの代表的な著作です

文学作品の構造、「物語がどのように語られているか」を、とても厳密に分析しています。

ジュネットは、物語を「物語内容」「物語言説」「語り」の3つに分けて、それぞれ本当に細かい所まで詳細に詰めていきます。

例えば、日本で小説を書く時に、初心者が最初に言われるのが「一人称視点(僕は)」と「三人称視点(○○は)」を混同するな、という注意なのではないでしょうか?

その手のものの「レベル99」まで行くことができる論文です。『続・物語のディスクール』と2冊目もあり、読みにくい上に量も膨大ですが、苦労して読む価値はあります

「文章の修行」になる難解な書です

『物語の構造分析』ロラン・バルト

物語はまさに人類の歴史とともに始まるのだ。物語をもたない民族はどこにも存在せず、また決して存在しなかった。あらゆる社会階級、あらゆる人間集団がそれぞれの物語をもち、しかもそれらの物語はたいていの場合、異質の文化、いやさらに相反する文化の人々によってさえ等しく賞味されてきた。物語は、良い文学も悪い文学も差別しない。物語は人生と同じように、民族を越え、歴史を越え、文化を越えて存在する

思想が力を持っていた時代の、最も大きな遺産の一つです

現代思想の大スター、ロラン・バルトが、「物語」について書いた8編のテクストが収録されています。

  • 物語の構造分析序説
  • 天使との格闘
  • 作者の死
  • 作品からテクストへ
  • 現代における食品摂取の社会心理学のために
  • エクリチュールの教え
  • 逸脱
  • 対象そのものを変えること

の8つです。どれも秀逸で、タイトルの時点で「スゴみ」がありますよね。

難解ですが、「物語」というものをより深い視点で捉えることが出来るようになるでしょう。バルトの文章はどれも読んでいて普通に面白いから素晴らしいですね!

中でも、「作者の死」は非常に有名です。SNSやブログなどをやっている人たち全員に読んでもらいたいですね

「作者」や作者の権利というものは、ごく最近になって発明されたものに過ぎず、作者は死ななければならないとバルトは主張します。

ある意味では、小説家を目指す人のモチベーションを削ぐ文章かもしれません(笑)

しかし、最近は動画やゲームなどのリッチコンテンツによって隅に追いやられがちな、「テキスト」の可能性を信じさせてくれる内容でもあります

以上になります。

まだ始めて2ヶ月ちょっとですが、最近はブログにハマっています。

ブログは書いてすぐに読んでる方から反応があるのがいいですね。

小説もちゃんと書かないとな〜と思う今日このごろです。